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「通信制高校から大学受験や大学進学は可能か?」教育現場関係者が解説

「通信制高校から、本当に大学受験や大学進学が可能なのか?」という親御様からの質問を受けることがありますが、この質問の答えはもちろんYESであり、通信制高校からの大学進学は珍しいことではありません。

この記事では、通信制高校に通う生徒が大学進学を目指した場合、具体的にどのような点が有利・不利になり、どういった準備をすべきか解説します。

なお、筆者自身は20年以上にわたり教育支援業に携わっています。一般的な高校受験・大学受験指導をメインとしながらも、不登校・いじめ・引きこもり児童の相談にも応じてきました。

その中で、フリースクールや通信制高校での生活をきっかけに立ち直り、大学進学を果たしたお子様も多くみてきました。

そんな現在教育現場にいる立場から、「通信制高校からの大学進学」に関するリアルで有益な情報を説明していきたいと思います。

通信制高校から大学進学は可能か?

冒頭でも書いた通り、通信制高校からでも大学進学は可能です。日本の大学の大半において受験資格となるのは、年齢と高校卒業資格だけであり、通信制高校や高卒認定からの受験ルートによる差別化はありません。

しかし、「通信制高校の大学進学率そのものが低いのではないか?」といった親御様の心配の声も聞こえそうなので、データを基に確かめましょう。

文部科学省の令和3年度学校基本調査によれば、普通科高校(全日制・定時制)全体での大学進学率は57.4%あるのに対し、通信制高校では23.1%となります。データ的には約2.4倍の開きがあります。

参考:e-Stat政府統計ポータルサイト

普通科高校(全日制・定時制)全体での大学進学率

通信制高校大学進学率

しかし、これらのデータには落とし穴があります。現実の普通科高校には学力差があり、「上位レベルの高校の大学進学率は95%以上」、「中堅レベルの高校でも70~80%」の大学進学率を持つのが普通です。

そうすると、学力下位レベルの高校はせいぜい20~30%の大学進学率、場合によってはもっと低い普通科高校も存在します。

ただ、「学力下位レベルの高校の勉強についていけずに辞めて通う生徒は、通信制高校に通っても大学進学は難しくないか?」といった意見も出てくるかと思います。

通信制高校は生徒を放任しない

通信制高校は学力に悩んで高校を辞めた生徒を迎え入れる環境があるため、勉強についていけなかった生徒を放任せず、生徒が納得するまで寄り添ってくれる学校があります。

生徒一人一人に対して学習指導をバックアップする体制やカリキュラムが整っている通信制高校であれば、学力下位の高校の勉強についていくことができなかったお子様であっても、置いてきぼりにせず教師陣が向き合ってくれます。

そして、学力が身についていき、教師陣が勉強の楽しさや大切さを教えてくれることで、当初大学受験を考えていなくても、大学受験を視野にいれて勉強に励む生徒を多くみてきました。

通信制高校の優れている点として生徒と教師陣の距離が近く、モチベーションを高める教育が大変優れており、「学ぶ向上心を上げていく教育」が普通科高校より優れている学校が多いように感じます。

通信制高校からの大学受験で不利になることはあるか?

冒頭でお伝えしましたが、通信制高校を理由に大学受験で明らかに不利になる点は特にありません。

受験資格上の問題もありません。

ただし、大学受験において注意としてお伝えしたいことが1点だけあるのが「指定校推薦を狙っている方」は、普通科高校と比べて不利に感じる方がいるかもしれません。

学力上位の公立高校や学校法人として提携先のある私立高校には、大学受験の中で豊富な指定校推薦枠が存在していますが、通信制高校には指定校推薦枠は少なく、希望の大学や学部があるとは限りません。

学力試験が課されることが少ない指定校推薦での大学受験は魅力的ですが、通信制高校から指定校推薦を狙える選択肢は普通科高校に比べて少ない可能性が高いです。

通信制高校だからこそ大学受験で有利になることはあるか?

逆に、通信制高校であることで大学受験を有利に進める方法はあるのでしょうか?答えはYESです。

さっそく見ていきましょう。

1:時間の使い方1~学習時間の効率化~

通信制高校は普通科高校に比べて「時間的な自由度が高い」ことが大きな特長です。

大学進学を目指すなら、これを活用しない手はないでしょう。

先を見据えて計画的な学習プランを立てるのはもちろん、自宅学習で苦手科目に時間を割いたり、得意科目をさらに磨いたりといったことが、普通科高校の生徒より柔軟に行えます。

2:時間の使い方2~アルバイトの時間を効率化~

もう一つの時間の使い方として、アルバイトなどの活動を経験しておく方法があります。

直接大学受験に役立つことではありませんが、社会経験を積んだり、バイト先の先輩などからの教えで視野が広がり、大学入試へのモチベーション作りに大きく役立つことがあります。

週1~2回のアルバイトを、勉強のストレスを解消するためのリフレッシュできる場として考えて頂くのもいいかと思います。

また、アルバイト代を貯金しておけば、大学入学後の経済的な負担軽減にもなります。

大学の学費を奨学金などで賄おうと考えている場合は、アルバイトと受験勉強を平行させてみる選択肢は有効な手段です。

余談ですが、筆者の教え子にもアルバイトなどの苦労の末、大学生になった生徒もたくさんいます。

その多くは「ひとり親家庭などの経済的事情を抱えた背景で・・・」といった理由の中で、大学生活やその先の社会人生活をキラキラと充実させるお子様が多いです。

人知れず涙を流す姿も知っていて応援してきただけに、感動もひとしおです。ことわざにもある通り、まさに「若いころの苦労は買ってでもしろ」を経験した立派な取組みです。

3:課外活動の実績を活用

大学入試にはAO入試や推薦入試といった手段もあります。

課外活動で「優秀な実績」または「珍しい実績」を残していれば、選抜方式では有利な要素になります。

個人種目のスポーツや文化活動、特殊な資格取得、最近ならYouTubeなどを含めた芸能活動の実績、等々はアピールポイントになり得るでしょう。

時間的な制約の少ない通信制高校に通っているからこそ、課外活動にエネルギーを割きやすいことを活用する方法です。

通信制高校から大学進学を目指すために大切なこと

これまで見てきた通り、通信制高校から大学進学を目指すことは十分可能であり、むしろ学び方が多様になってきた日本において、より多くの方が通信制高校から大学進学していくことが増えてくる可能性もあります。

しかし、記事冒頭で示した進学率のデータからもわかる通り、目指したからといって誰もが簡単に大学進学に成功するものではありません。

通信制高校から大学進学を目指す場合に、もっとも大切になることは何でしょうか?

筆者がこれまで20年にわたり学習支援を行ってきた中で、通信制高校から大学進学を果たしたり、下位レベル校から国立大学に進んだりといった成功を納めた生徒には、ある2つの特徴があります。

もしあなたがこうしたポイントを押さえて通信高校での生活を送れるのであれば、大学進学の夢も、ぐっと現実的なものになるはずです。

以下で紹介していきます。

1:モチベーションを維持できること

大学受験合格を目指す上で、モチベーションを維持することがとても重要になります。

受験勉強の期間として約1年間、長い方は高校生活3年間にわたって勉強に精を出す中で、忘れないでいただきたいのが、大学を目指す動機やきっかけです。

正直な話、動機やきっかけに関しては、自身の内的なものであれば何だって構いません。

「カッコイイ学生生活への憧れ」「いい大学で学んで成功したい」「遊びたい」「モテたい」「大学デビューしたい」・・・私的な動機でまったく構いません。

大学へいくことに対して、当事者意識を持って自分の努力へと変えていけるかどうか、それが一番大切なのです。

逆に「親や周囲から勧められたから」「やりたいことが見つからないから何となく」といった、当事者意識のないが故に、途中で挫折してしまう生徒を何度も見てきました。

1年~3年間モチベーションを保つということは大変なことで、「プライベートの誘惑ごと」や「勉強することが辛くて逃げ出したい」といった気持ちになることもあるでしょう。

そのためモチベーションを作り出す、または維持するために有効な内容としては「同じ目的を持つ仲間と競い合う、励まし合う」「希望の大学を実際に見に行く」「将来の成功をイメージする」などが挙げられます。

簡単でないことはもちろん分かりますが、モチベーションを保つ意識は大切にして忘れないでください。

2:アドバイスしてくれる存在を持つこと

学習の進捗やバランス、目標設定、その他受験時の悩みごとを客観的にアドバイスしてくれる存在も必須といえます。

これは親や兄弟、親戚、近所のお兄ちゃんお姉ちゃんでも構いませんが、専門的知識や指導経験が豊富な人物だとなおよいでしょう。

つまりは塾や学校の先生、フリースクールなどの教師やカウンセラーの方、プロの家庭教師などと良好な信頼関係を持てれば、やるべきことを迷わず、勉強に専念できる可能性が非常に高いです。

今居る場所を大切にして大学進学を目指しましょう

学び方は多様になってきた時代です。

例えば、2021年に旺文社から出版された「高校脱出マニュアル」という本の中では「高校に行かないで大学に行く」または「通信制高校を利用して大学に行く」方法がたくさん紹介されています。

「実際に有名大学に合格を果たした体験談」や「大学卒業、就職して社会人として活躍している体験談」などが豊富に記載されていて、現代日本でも学びのルートは多様化してきたことを象徴しています。

参考書籍:旺文社刊/高校脱出マニュアル

この本でも、通信制高校の利用は大きく取り上げられている中で、学習力に自信があれば「高卒認定+独学」で大学合格した方の参考になる話しも掲載されています。

大学進学を目標に置いているならば「今いる環境」を大切にして、目標大学合格のために「一生懸命頑張っていく気持ち」を忘れないようにしましょう。

そして、「通信制高校にいる環境を、大学受験を受ける場として最大限活かせる場所」として、ポジティブな気持ちで大学受験に挑んでいただければと思います。

「長期の不登校をなくしていくために。」


浦和高等学園高校部(新入生)

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