文部科学省の調査によると、令和3年の小中学生の不登校の生徒数が24.4万人以上と発表がありました。
この人数は過去20年で最多であり、不登校の生徒数が20万人を越えたのは、初めてのことです。
(前年度(令和2年)から4.9万人近くの増加。)「不登校の児童数が過去最多の24万人を突破した」といったニュースは、コロナ禍の中、ネットや新聞などでも大きく取り上げられたため、親御様にも衝撃があったかと思います。
その中で、「不登校生徒の急増は、コロナ禍による社会の混乱を反映している」という意見もあれば、「コロナ禍はきっかけに過ぎず、もともとあった教育現場の限界が露呈してきているため」という意見もあり、専門家の間でも不登校急増の原因については意見の分かれるところです。
そこで今回は、コロナ禍で不登校の生徒が大幅に増えた原因について、いくつか条件を分けて考察したいと思います。
その考察を踏まえて、後半では「どうすればお子様の不登校を未然に防げるか」や「お子様が不登校になってしまった場合の対処法」についても紹介したいと思います。
目次 |
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1:コロナ禍に入り不登校の学生が増えた原因 2:コロナ禍でお子様が不登校に陥ることを事前に防ぐ方法 3:コロナ禍で不登校になってしまったお子様とのコミュニケーション方法 4:不登校からの脱却として「フリースクールや通信制高校」の存在 |
コロナ禍に入り不登校の学生が増えた原因
不登校の生徒が増えた原因について、ここ数年間の「コロナ禍の影響下での社会」を区分けして、教育現場やお子様の心情の変化があったかを考察します。
1:コロナウィルスによる生活の変化と不登校の関係
「コロナウィルスの流行」だけが不登校増加の原因であるとするのは短絡的ですが、コロナ禍をめぐって日本社会全体で生活様式の変化がありました。これらは明らかにお子様の生活や学びにも影響を与えました。
コロナ禍初期・混乱期
スポーツ・文化・イベントなど例外なく、あらゆる分野で「自粛の嵐」が吹き荒れたことは、記憶にも新しいことでしょう。
正しい情報だけでなく誤った情報も流れては大人たちも疑心暗鬼になり、世の中が警戒ムードでピリピリとした雰囲気でした。
このような環境下で、マスクの常時着用、友人との交流が途絶えがちになるなど、コロナ禍初期の「行動制限」がお子様の行動を減退させたことは間違いありません。
この時期から政府は全国の学校に対して休校要請を行い、急遽オンライン授業への対応を進めました。
学校へ通わずにオンライン上で授業を行うことを「楽しむお子様」「物足りなさや不満をもつお子様」、授業を受ける「意義やモチベーションが低下してしまったお子様」と、新しい学校環境に様々な価値観を持ちはじめた時期です。
コロナ禍中期・withコロナの時期
コロナ禍がそれほど若年層には危険でないことが認識されてきた時期です。
ただ、ワクチン接種が進み行動制限が緩和され始めてもなお、以前とは異なる生活様式が続き、お子様の置かれた環境が好転したとは言い難い状況でした。
徐々に新しい学習スタイルが確立されてくることにより、対面授業とオンライン授業が併用される形で、感染状況や地域の状況に応じた学習が進められていました。
ただ、学校へいかずに授業が進められてきた習慣に慣れてしまい、学校へいく気持ちが薄れてしまったお子様が増えてきたようにも感じます。
ポストコロナ時代へ
マスク着用、手洗い消毒や検温、ソーシャルディスタンスなどのルールはあるものの、現在を含めコロナ禍への対応は落ち着いてきた現在は、学校への登校が日常となりました。
しかし、コロナ禍の変遷を見てきた通り、変わってしまった生活様式や人々の価値観は簡単にはコロナ禍前には戻りません。
その結果、コロナ禍初期から中期の間で学校へいく意欲を失ってしまったお子様は、学校へいく気持ちを失ったまま今に至るのではないかと思います
2:コロナ禍とお子様の心情
コロナ禍の生活環境を理由に学校へいかなくなってしまったお子様の心情についても考察したいと思います。
コロナ禍初期・混乱期
教育現場が大変苦しい状況で、お子様の声が現場側へ十分に届かないことが多かった時期だと思います。また、部活や習い事などの状況も活動が止まってしまったことにより、ストレスのはけ口もない状況だったと思います。
その結果、気持ちや想いが学校側へ届かなくなってしまったことにより、学校への気持ちが遠のいてしまったお子様が増えた時期かと思います。
コロナ禍中期・wiwhコロナの時期
「密な接触は避ける」「給食の時間は黙食が基本」「マスク越しで伝わりにくい感情」など、孤独を感じる心情や、自己肯定感が下がってしまう要素が続いた時期でした。
その結果、学校へいくことを楽しみにしているお子様が、少なくなってしまったように感じます。
また、オンライン授業が成立してしまったことで、「学校に行かなくても生活が成立する」と感じたお子様の一部が、不登校へと繋がっていったことも予想できます。
ポストコロナ時代
「学校現場としては、コロナ禍による弊害を乗り越えはじめていると言ってもよいと思います。
しかし、不登校のお子様の心情は、コロナ禍初期~中期で芽生えた気持ちを未だ引きずる状態が続いているのかと思います。
ゆとり教育のように「教育現場の深刻な問題」が顕在化されるのは、しばらく時間が経ってからのことが多いです。
そのため、コロナ禍による不登校問題が顕在化された時には、不登校のお子様の心情がさらに表面化されていくかと思います。
3:コロナ禍とは無関係と思われる要因
文部科学省の調査の内容でもわかる通り、小中学生の不登校問題として「平成13年の不登校生徒数は約13.8万人」だったのに対し、コロナ禍前の「令和1年には約18.1万人」と、なだらかにですが不登校の小中学生は、約20年の間で年々増加傾向にあります。
そのため、コロナウィルスの流行と不登校問題は無関係といわれている「不登校の諸問題」についても考察します。
いじめ問題
コロナ禍以前からある社会問題です。文部科学省の調査によると、いじめの認知件数についてコロナ禍前で比較すると、平成25年は「約18.5人」に対し、平成29年には「約54万人」と3倍近くも増加しております。また、コロナ禍前後でのいじめの認知件数を比べると、よりコロナ禍以前からいじめ問題の解決策が進んでいないことが分かります。令和1年(コロナ禍前)のいじめの認知件数は「約61.2万人」に対して、令和2年(コロナ禍後)は「約51.7万人」と減少傾向にありました。しかし、令和3年の「コロナ禍中期・wiwhコロナの時期」の学校へ通うことが日常化に戻ってきてからのいじめの認知件数は「約61.5万人」と、コロナ禍前と同じ水準に戻っております。SNSなどのバーチャル上でのいじめが増えていることを耳にするようになりましたが、人を傷つける行為はリアルな生活で起きていることがよく分かります。いじめ問題は、学校教育というより日本社会が向き合わねばならない大きな問題でしょう。
価値観の多様化
性差、学歴、趣味趣向、発達の差や、インターネットの普及、グローバル化など世間の風潮を受け、社会の価値観は多様化しています。
現在の日本の画一的な教育手法が、こうした変化についていけてないというのも、不登校の原因として挙げられています。
教育現場の対応力の限界
「生徒の様子に十分に目を配る余裕がない」、「生徒の叱り方が難しいためのコミュニケーション不足」から、教育現場では、お子様との向き合い方に困惑している教員は増えているように感じます。
その結果、生徒との信頼関係が崩れてしまい、トラブルがあるとすぐにお子様が学校へこなくなってしまう構図ができあがっているように感じます。
この問題はとても大きな問題で、「現場での意識改善」「学校教育制度自体の改革」「教員の育成」など多角的に取り組まなければ解決しない問題でもあります。
学校教育を統括する文部科学省でも問題点は共有されており、さまざまな話し合いがなされています。
方向性としては「外部教育機関(フリースクールなど)を活用しながら柔軟に対応していこう」というのが本筋の流れのようですが、まだまだ世間には方向性が伝わりきっていないと思います。
参考リンク
文部科学省/不登校に関する調査研究協力者会議
文部科学省/フリースクール等に関する検討会議
コロナ禍でお子様が不登校に陥ることを事前に防ぐ方法
コロナ禍が絡み、お子様を取り囲む複雑な状況をご理解していただけたかと思います。
では、どうしたら不登校を防げるでしょうか?不登校のきっかけを作らないための方法を紹介します。
1:体調不良の訴えやだらしのない生活に注意
「お子様が不登校に陥る前には、前兆があることが多いです。
「お腹が痛い」「頭が痛い」「足が痛い」などの症状を、日頃から訴えて何度も学校を休んだり、遅刻していたら不登校が起きそうになっている重要なサインとなります。
また、具体的な症状はなくても、休日や平日も変わらないだらしのない生活(長時間テレビ、スマホ、動画、ゲームに熱熱中すること)が続いていて、行動意欲の低さが顕著になってきた時には要注意と言えます。
親御様は、「体調不良を訴えだす、だらしのない生活に陥る」前兆を察知して、お子様とのコミュニケーションを普段よりも密に取ることが重要となります。
2:自己肯定感を上げる工夫をする
習い事や課外活動、普段のお手伝いなど、ちょっとしたことでも構いません。
「自己成長につながるための活動」や「思いやりのある行動」を頑張っているお子様を、「褒めてあげること、存在価値を認めてあげること」で、お子様が自分自身の存在価値を見出せるようになり、自信をもち、豊かな学生生活を送ることができるようになるはずです。
お子様はネガティブなことに目を向けすぎて卑屈にならずに、小さなことでもポジティブなことをした自身を認めてあげる気持ちを持つことが大切です。
3:何よりも規則正しい生活
よく指摘される当たり前なことですが、非常に重要なことです。人間には自律神経というものがあり、不規則な生活は体内のリズムに負担をかけるため、心身に不調をきたします。
成長段階のお子様が受けるダメージは大人以上に傷を負ってしまうことは医学的にも明らかであり、普段の生活に支障をきたしてしまうため、学校へいく気力も無くなってしまいます。
そのため、食事と睡眠時間のリズムは年間を通じて安定させましょう。
コロナ禍で不登校になってしまったお子様とのコミュニケーション方法
「すでに不登校になってしまったお子様」に対する対処法を紹介します。不登校になってしまった場合は、無理に家族だけで対応しようとせず、周囲に助けを求めることは、まったく恥ずかしいことではありません。むしろ家族だけで抱え込んでしまうと、問題解決が遅れる傾向があるため要注意です。
1:規則正しい生活を取り戻せるようサポート
不登校の初期段階であれば、生活リズムの再生によって自発的にお子様が不登校を解消できる可能性があります。
はじめにやるべき対応と言えるでしょう。
2:親子の対話の時間を作る
親子の対話の時間が作れているならば、不登校問題は解決できる可能性が高いです。
不登校の原因を無理やり聞き出すのではなく、いったん深い事情は聞かずに、不登校を受け入れてあげることが重要です。
もし、お子様との対話が成り立たない関係性であれば、迷わず専門家の力を借りましょう。
3:フリースクールや通信制高校の存在を伝えてみる
不登校が長引いている場合は、復学による解決よりも、フリースクールや通信制高校を利用したほうが、より現実的解決策になるかと思います。
寧ろ復学よりも、「新たな環境でやり直す」「自分のペースに合わせることができる環境」で過ごすことで、より充実した学生生活を送ることができると思います。
→中学生が不登校に陥ってしまう原因と対策方法を教育現場関係者が紹介
→高校生が不登校に陥ってしまう原因と対策方法を教育現場関係者が紹介
不登校からの脱却として「フリースクールや通信制高校」の存在
最後にフリースクールと通信制高校について紹介します。専門家の間でも、不登校問題への切り札として、フリースクールや通信制高校の有効活用が議論されています。
フリースクールとは?
フリースクールとは、一般的な公私立中学校とは異なる、独自の教育方針やカリキュラムを持つ民間の教育支援団体です。
従来の学校制度に馴染めない、不登校で学校へいくことができないお子様に対して、自由度の高い学習環境を提供することを目的としています。
フリースクールにはスクールごとにさまざまな特徴があるため、スクール選びはしっかりと情報収集や学校説明会へ参加することをおすすめします。
通信制高校とは?
通信制高校とは、自宅学習や月数回のスクーリングにより、自分のペースで学習を進めることができる高校です。
全日制高校に比べて自分の時間を作ることができるため、空いた時間でアルバイトや自分の目標を叶えるための活動に時間を使う生徒が多いです。
また、全日制高校のような週5日通学を希望する方に向けた通学コースを設けた通信制高校もあります。
フリースクール同様、通信制高校もさまざまな特徴があるため、情報収集や学校説明会へ参加することをすすめします。
この記事を読んでいる方の中には現在学校にいくことができず、もどかしい思いをしているお子様、不登校のお子様を持つ親御様もいるかと思います。
まずは新たな環境で新たな人生を歩む準備の一環として、フリースクールや通信制高校について調べてみてはいかがでしょうか?
そして、少しでも気になることがあれば、学生生活復帰への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
不登校の生徒数は年々増加している中で、現在将来が見えずに悩んでいる不登校のお子様やその親御様が、新しい道へ進み、笑顔でいられる日がくることを強く願っております。
「長期の不登校をなくしていくために。」
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