「出席日数稼ぎのためのフリースクール通い」という話題を耳にしたことはありますか?不登校について調べると「フリースクールに通っていれば、中学校を出席扱いにしてもらえる」といった情報が出てくるためお子様が不登校になったとき、出席日数を稼がせるためにフリースクールへ通うという選択肢をお考えになられる親御様がいらっしゃいます。
また「フリースクールは出席稼ぎのため在籍だけして、学力は家庭教師やオンライン学習で補えば、中学卒業と高校受験は何とかなるのでは?」と考えてしまう親御様もいらっしゃるようです。
しかし、こうした行動は多くの場合正解とは言えません。
今回は、中学生の不登校で「出席日数稼ぎ目的のフリースクール探し」がどうしてよくないのか、フリースクールへの出席が中学校の出席扱いになるのはなぜなのかについて、中学校に通う本来の目的やフリースクールが果たすことができる役割にも触れながら解説します。
フリースクールによる出席日数稼ぎとは?
「フリースクールによる出席日数稼ぎという言葉を初めて聞いた」という方のために、フリースクールで中学校の出席日数を稼ぐことが可能になった背景を説明します。
中学校は出席日数が進級や卒業を認定する上での必須条件ではないことから、学校を欠席していても卒業を迎えることができます。
ただ、「小中学校は義務教育のため、学校へいかなくてはいけないのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思います。
義務教育について、「義務」とは、お子様が学校へ通う義務ではなく、親御様がお子様を学校へ通えるようにしなければいけない義務のことを指します。
例外として、私立中学校に通っている方が学校を辞めて公立中学校へ編入手続きをしなかった場合は、卒業資格を得られない可能性がありますが、中卒認定試験を受けることができます。
公立中学校に「在籍していれば」、学校へいかなくても卒業資格を得ることができるのです。
そのため、中学校を卒業するには学校へいかずにただ在籍していれば卒業することができるため、「出席日数は重要ではない」のです。
それでも出席日数が大切になる理由は、出席日数が「高校入試に必要とされる内申書(評価点など)にも記載されるデータとなるから」です。
フリースクールに「籍があれば出席扱い」の間違った解釈
本来、学校外の教育施設であるフリースクールに在籍したからといって、中学校の出席に替えられることはないはずのものでした。
しかし、近年増え続ける不登校問題に対し、文部科学省は「フリースクールの持つ働きを認めるべき」との結論を出し、関連する法整備(※)も進められました。
(※)文部科学省:義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律等について
これを受けて、文部科学省から全国各自治体の教育委員会に対し「フリースクールでの活動実績が認められる場合」には、中学校へ通わなくても出席扱いにするなど、「不登校の生徒が必要以上に不利にならないように処置や対応をとるように」との通達を何度か出してきました。
この通達により現在では、中学校側は活動実績が認められたフリースクールから在籍している報告を受けた場合、その生徒を出席扱いとすることが一般的になりつつあります。
フリースクールへ通わなくても、「フリースクールへ在籍している証明」があれば出席扱いになるということになります。
そのため、「在籍していれば出席扱い」に対する理解の仕方を、「フリースクールに行かなくても出席日数を稼げるのではないか?」といった、フリースクールの存在に対する間違った意味で誤解されてしまっていることがあるようです。
結果的に、お子様が不登校になったとき「中学の出席日数稼ぎ」目的でフリースクールを選ぼうとする方が増えてきているというのが実状です。
次項から順を追って「中学の出席日数稼ぎ」目的でのフリースクール選びが良いことではない理由を説明していきます。
目的を持ってフリースクールへ通う重要性
「出席日数稼ぎ目的でのフリースクール選び」が正解とは言えない理由を解説していきます。
不登校の原因には、人間関係が合わない、学校に馴染めない、勉強についていけない、家庭環境による原因、学業成績に関する原因と、実にさまざまです。
正確な原因を探り当てることも大切ですが、多感な中学校時代は、親御様へ本心を見せることに抵抗感があるお子様も多くいらっしゃるため、不登校の原因がよくわからない場合もあります。
そのため、まず周囲の大人は「不登校の原因追及」よりも「お子様の居場所づくり」を優先するべきです。
不登校になったお子様は、不登校の理由を問わず共通して「居場所」を失っています。
もし「中学校へ通う目的を代わりに果たせる居場所」さえ与えられるのであれば、そこはお子様にとって新たな居場所となり、傷ついた心は癒され、伸び伸びとしたスクールライフと成長の日々を取り戻す可能性があります。
それが本来の「フリースクールが持つ役割」なのです。
1:一般的な教養・学力を身につけためにフリースクールへ通う重要性
中学校へ通う大きな目的は、「教養と学力を身に付けること」です。
中学生は自身の成長する過程の中で、中学校で必要な基礎知識としてさまざまな教科を学びます。
中学生が得るべき教養や学力とは、義務教育として学ぶ国語や数学など各教科の知識だけにとどまらず、「問題に対してどの様な答えを出すか?」といった処理能力や対応力、「どのようにして学ぶか」といった、学習力(効率的に学び吸収する能力)の習得も含まれています。
処理能力や対応力、学習力は、大人になって社会へ出た時に大変重要な能力です。
義務教育として学ぶ各教科の知識の授業を学ぶ充実度については、フリースクールは公私立中学校に見劣りする場合もあります。
しかし、「処理能力・対応力・学習力」の習得の場としては、教育環境が充実しているフリースクールであれば、公私立中学校にも負けず劣らずな、教育環境が用意されております。
勉強を学ぶ「意義」を大切にしたフリースクールへ通うこと
フリースクールの授業は公私立中学校同様の教科の授業がカリキュラムにあります。
その中で、ただ知識を学ぶために英語や数学や国語などの授業を進めるのではなく、問題を解く為の処理能力や対応力を磨くための教育環境や学習力の向上を大切にしているフリースクールがあります。
その様なフリースクールは、公私立中学校を学力が原因で不登校になってしまった中学生に対して、「勉強をする目的や大切さ」を学んでほしいといった「フリースクールとしての意義」を強く持っているように感じます。
不登校問題が社会問題となる現在、少しでも不登校の学生に対して、「学ぶ自信や楽しさを分かって欲しい」といった情熱を心情に、フリースクールを経営されているところもあります。
勉強を学ぶのは家庭教師やオンライン学習だけで補い、「出席日数目的で近くのフリースクールへ在籍していれば良い」といった考えではなく、フリースクールに在籍するのであれば、「学ぶことに対する価値」を大切にするべきです。
また、最近では学力不足による不登校になってしまった中学生を復学させるための学習環境が用意されているフリースクールもあるため、公私立中学校に比べても劣らない授業を行うところもあります。
そのため、学習カリキュラムの気になるフリースクールがあれば、まずはスクール見学会や説明会へ参加してみることをおすすめします。
2:同世代との交流を通じて友達とのかかわりを学ぶのがフリースクールへ通う意義
中学校は、他者とのかかわりを学ぶことで「社会を学ぶ」場所です。
社会に出て生きていくための準備段階として中学校があります。
クラスでの日常、学校行事や部活動、委員会活動など、友人や仲間と過ごし、楽しみだけでなくトラブルや困難にも対処していく時間の中で、お子様は成長します。
しかし、「周囲と馴染めない」「人間関係が合わない」生徒への対応」などに十分対応しきれていないのが学校教育の現実です。
その点において、人間関係を構築する「専門の知識や経験」を持つ指導員を配置しているフリースクールは、公私立中学校より優れた環境が提供できていると言えるでしょう。
フリースクールは、人間関係が合わない、周囲に馴染めないことで中学校へいくことができなくなってしまったお子様が、安心して学生生活を送ることができる場所です。
そのため、生徒の心をケアするカウンセラーや教師陣は、公立中学校に比べて生徒同士の人間関係を築き上げるための教育に力をいれて、万全なサポート体制で生徒同士の人間関係をケアしていきます。
大切な友人や仲間をつくる中で、踏み出しきれない背中を優しく押してくれる場所がフリースクールです。
インターネット社会で人間関係が軽薄になった現代社会の中、友人関係を軽視するお子様や親御様が増えてきたと感じますが、成長していく中で友達の存在は「お互いの人間力を高め合うため」には、かけがえのない存在です。
フリースクールはただの出席数稼ぎを目的にするのではなく、大切な友人や仲間をつくる場所として見ていただければ幸いです。
3:自分自身の存在価値や役割を見出すためにフリースクールへ通う重要性
中学校は、クラスメートとの日常、学校行事や部活動、委員会活動などを通して、自分自身の存在価値や役割を見つける場所です。
役割を果たしたり成果を得ることで、「周囲から認められ評価されること」や場合によっては「競争で敗れて悔しさや挫折を味わうこと」で、心の内面を育みます。
また、中学校は、「好きなこと・将来の夢や目標を見つける」といった自分自身を見出すことで、今の自分の立ち位置を把握する場所でもあります。
しかし、不登校により自分自身の存在意義や今いる立ち位置を見つけられず悩んでいるお子様こそ、フリースクールは大切な居場所になります。
公私立中学校同様、フリースクールにも「行事ごと、課外活動、個人単位でも参加できるような部活動(芸術系・運動系・eスポーツなど)」を取り入れているスクールは多くありますが、公私立中学校では味わえないような個性的な体験をできる場合もあります。
不登校の中学生にとって「心を育む」という意味で、自分の「存在価値や役割、立ち位置」を見つけることができる場所が中学校ではなく、フリースクールになるということです。
出席日数稼ぎを目的に「フリースクールへ在籍しているだけ」ではこれらの経験ができずに、心を育むチャンスを失ってしまうのは非常にもったいないです。
中学校への出席事情を表面上で解決するのではなく、「心の成長」のためにフリースクールへしっかりと通うことはお子様にとっては非常に大切なことです。
フリースクール選びで重視したい内容
いざお子様が不登校になってしまったときは、どのような視点でフリースクールを選べばよいのでしょうか。これまで見てきた通り「学びと心を育むことができるスクールであるか?」といった点を重視するとよいでしょう。
以下に、フリースクール選びでチェックポイントとしておきたい3項目を紹介します。
1:お子様の気持ちに合った環境
フリースクールの環境は、親御様が見てどれだけ納得しても、お子様の気持ちに合っていることが大前提です。
お子様が「自分の意志で通えるようになること」「前向きな気持ちになれること」はフリースクールを選ぶ上で最も重要な項目とも言えます。
お子様が気になるフリースクールの説明会や体験入学へいってみることをおすすめします。
ただし、明らかにプラスとならない環境のフリースクールをお子様が選ぶのであれば、親御様の気持ちもしっかりと主張した上で、お子様・親御様ともに納得できるフリースクールを選ぶことが必須になります。
2:居心地の良さ
フリースクールの多くは学生の「居場所づくり」を大切にした空間です。
生徒一人一人が居心地の良い空間作りを重視しているのが、フリースクールです。
しかし、居場所づくりより学習面のサポートに比重を置き過ぎているフリースクールも中にはあるため、気になるフリースクールを見つけた際には、居場所づくりで重視している内容について直接聞いてみることをおすすめします。
心に傷を負い、不登校になってしまったお子様は特に重視したい内容です。
3:学習の指導体制
フリースクールには教員資格を持った指導員が複数人いることは珍しくありませんが、各教科を専門に担当できる教師が揃っていないところもあります。
そのため、授業の充実度でいえば公私立中学校に比べて劣ってしまう場合もあります。
そこで、学習環境の指導体制でフリースクールを探すのも重要になります。
気になるフリースクールへ直接足を運び、各教科を教える教師の情報を聞いたり、授業風景を実際に見て適しているかを事前に調べることが重要です。
また、公私立中学校のような「週5日、集団授業のペース」が合わなかったお子様でも、フリースクールによっては「マンツーマン指導を大切にした環境」であったり、「生徒のペースに合わせた学習カリキュラムが充実した環境」であるといった、フリースクールの学習環境を事前に把握しておくことも大切です。
フリースクールの出席日数稼ぎまとめ
今回の記事で伝えたかったことをまとめると
●フリースクールで中学校の出席日数が稼げるのは事実だが、出席日数目的だけでフリースクールを選ぶのはNG
●フリースクールは中学校の代わりになる「学びを促し、心を育む」場所である
●フリースクールは「お子様の居心地が良い場所であるか」を大切して選ぶこと
となります。お子様・親御様ともに理想的なフリースクールと出会うことができれば、今までの学校生活より充実した日々、成長のチャンスが数多く訪れるはずです。
「出席日数稼ぎ」という視点は無くして、お子様の成長や明るい日常生活を築いていけるフリースクールで、充実した学生生活を過ごして頂ければ幸いです。
「長期の不登校をなくしていくために。」