最近、HSCという言葉を見かけたことがある人は多いかもしれません。
「ネットでHSCという言葉を知ったが、自分の子どもの特徴に当てはまる」
「不登校になりかけているわが子が、HSCかもしれない」
「自分自身がHSPのため、子どももHSCのような気がする」
など、HSCやHSPといった用語を、インターネット掲示板やSNSを通して目にするようになってきました。
その中で、HSCは不登校問題にも関係しているとの見方が一部にあります。
そこで今回は、HSCを初めて知った人のために「HSCとは何か?」の紹介をはじめ「HSCと不登校は関係性があるのか?」「HSCを克服するためにはどうすれば良いか?」などの疑問を紹介していきたいと思います。
HSCとは?特徴も紹介
はじめに「HSCとは何か?」について紹介します。
HSCとは「Highly Sensitive Child」の略で、「とても敏感で繊細な子ども」といった意味になります。
敏感なお子様は感受性が強く、繊細であり、状況を深く理解しようとする傾向があります。
しかし、その敏感さゆえに、過剰な刺激やストレスによって疲れやすく、不安やストレスを抱えることがあります。
HSCと近い用語としてHSP「Highly Sensitive Person」の略で「とても敏感で繊細な人物」といった言葉もあります。
HSCは「医学的に見て病気ではなく、発達障害でもない」ということを強調しておきます。
HSCはその人が生まれ持った特徴であり、気質のようなものであると説明されています。
また、HSCに関してはエビデンスを伴う研究成果はほとんど認められていないことが現実です。
精神科医や発達の専門家などの間でも、HSCの定義や、HSCとそうでない人の境界線について懐疑的な意見を述べる人もおり、まだまだ議論の余地があるようです。
さらに、支援が必要となる発達障害との混同や、差別の助長なども指摘されているため、あまり公的な立場で使うのは控えたほうが良い言葉でしょう。
1:HSCの歴史
HSCのもととなったHSP(Highly Sensitive Person)は、1990年代にアメリカの心理学者であるエイレン・N・アーロン博士が提唱した概念であり、環境刺激に対する感受性や応答性が高く、とても敏感な人のことです。
その後、その範囲をお子様にも適用し、HSC(Highly Sensitive Child)という概念も提唱されました。
2000年代になって、HSCが日本でも紹介され、書籍やネットを介して爆発的に広まった経緯があります。
HSCは比較的新しい概念のため、日本を含めたどの国においてもまだ研究がそれほど進んでいないのが現実です。
2:HSCの特徴(DOES)について
HSCには、提唱者のエイレン・N・アーロン博士などによって定義された典型的な4つの特徴があり、以下4つの特徴をすべて満たすことにより「その人はHSC」といわれます。
この4つの特徴は頭文字を集めて「DOES」としてまとめられているので、以下に紹介します。
頭文字(D):
特徴(Depth of processing)→試行プロセスが深く、ゆっくりしている
説明→思考が常に深い。状況を把握するまで、または完全に理解できるまで、行動には移したがらない。慎重に時間をかける
頭文字(C):
特徴(easily Overstimulated)→刺激を通常より敏感に受け取る
説明→光や音、肌触りや臭いなど、五感を通して受ける刺激に過剰とも思える反応を示す傾向がある
頭文字(E):
特徴(Emotional responsiveness)→感情的なことに強く反応する
説明→周囲の人間または映像などでも、目にした喜怒哀楽の感情に強い影響を受ける。同調またはストレスを受ける
頭文字(S):
特徴(empathy and sensitive to Subtle stimuli)→わずかな刺激にも共感や反応を示す
説明→周囲の人々の声のトーンや表情の変化などに反応しやすく、影響も受けやすい
3:HSCの診断について
HSCの歴史で紹介した通り、HSCをめぐる学術的研究はまだあまり進んでおらず、日本の医療制度において、HSCは疾患名として診断されることはなく、治療法や治療薬は存在しません。
一部の精神科などで「HSP型うつ病」などと分類して治療を試みることはあるようですが、スピリチュアル的な非科学的療法を紹介する専門外の人々の存在も指摘され、扱いには注意が必要とする意見も出ています。
現在のところ、日本の専門家の大半は「生まれつきの気質としてうまく受け入れ、周囲の理解を得るべき」との考え方が主流となっているようです。
さらにネット上では、HSCの「自己診断」や「セルフチェック」なども存在しています。
これらに関しては特に悪質なものではありませんが、科学的に認められたエビデンスが確認できないため、性格診断のようなものと同じ程度と考えたほうがよいでしょう。
4:HSCとの向き合い方
HSCは「生まれつきの気質としてうまく受け入れ、周囲の理解を得るべき」の認識に従って、うまくコントロールしていくべき問題だと言えます。
家族や友人など近しい人からの理解、そして本人が「自分はHSC(HSP)である」と認識していること、そしてそれをネガティブ要素として捉えないことが大切です。
HSCと不登校の関係性
HSCは「不登校との関連性は大いにある」という見解は、多くの専門家の間でも言われています。
なぜならば、HSCの特性を持つお子様にとって、学校という空間や環境は、かなりの「ストレスや疲労の原因」となっていることが容易に予想されるからです。
小中高生別にHSCと不登校の関係を考察します。
小学生の場合
小学生の間は、HSCの影響をはっきりと見抜くのは困難だと思われます。
特に低学年のうちは、お子様本人が「自分はHSCだ」と自覚できる可能性はほぼゼロだと思います。
実際に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の診断をつけるのも難しいとされる年代のため、不登校になったとしてもHSCの影響だと断言できる可能性は低いです。
また、小学生のうちはHSCだったとしても、親御様や教員からは「慎重でマイペースな子」と捉えられる程度で、問題が表面化されていないだけの可能性もあります。
その中で、高学年になるほど不登校生徒数が増えているのは、成長していく過程で自我が確立されはじめていくのと同時に、HSCが問題化されはじめてくることも推察されます。
中学生の場合
中学生は自我の確立期でもあり、もっとも多感な時期と重なります。授業のペースが上がり、学校行事や部活動などで集団行動が本格化する環境は、HSCの特性を持つお子様にとってはかなり学校生活が厳しい環境となるでしょう。
中学生から不登校生徒数が「急増する背景」から、中学生で不登校を経験するお子様の間でHSCに影響を受けている方が多くいるのかと考察しています。
小中学生の不登校生徒数が増えているソース:
文部科学省/令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要(学年別不登校生徒の数・グラフ)
高校生の場合
高校生になると、HSCの特性を持っていたとしても、日々の緊張から生まれる疲労にも対抗できる体力がついてきたり、「自分はHSCの特性を持っている」と認識することができるため、不登校という形では表れないことが予想できます。
大人がHSPだったとしても、仕事や日常生活を問題なく過ごせているのと同じで、うまくHSCの特性をコントロールできている結果だと言えそうです。
ただし、HSCと上手く付き合っていけない場合は、不登校につながってしまう可能性もあるでしょう。
HSCとの上手な付き合い方
HSCは気質であって病名でも障害名でもありません。
また、必ずしも「マイナス」「ネガティブ」な特性ではなく、大人になればその特性(思考力の深さ・感情・共感力など)を活かしてさまざまな分野で活躍できる可能性まであります。
「HSC(HSP)は付き合い方次第である」と捉えるのが現時点での正しい姿勢だと思います。
お子様本人がHSCと向き合っていく、または周りの人間がHSCの人をうまく導いていくポイントは、「自己肯定感」にあるといえます。
また、HSCは個人差が大きいとされているため、様子を見ながらお子様の生活様式の修正や調節することが重要になってきます。
1:自己肯定感が高まる環境を用意する
高HSCの人の問題点として、今の環境に対して、「どれくらい日常的な「生きづらさ」や「息苦しさ」を感じてしまっているか」です。
生きづらさや息苦しさによるストレスは、自己肯定感を高めることによって緩和できると言われています。
HSCとして生活していても、「友人や家族に理解者が多い環境で育った人」「好きな分野で能力を発揮できる環境にいる人」など、自己肯定感がじゅうぶんに与えられている人は、HSCの特性にあまりつらさを感じないことが多いようです。
それどころか、HSCでない人と同等かそれ以上の充足感を得て過ごしている人もいます。
「安心できる環境」をつくり、過度なストレスを避けることが重要です。
2:精神科医に相談する
HSCと思われる特性でも、すでに日常生活に支障が出るほどの「ストレス」や「行動」が見られる場合は、早急に小児科もしくは精神科(できれば小児発達の専門家など)に相談しましょう。
HSCは「医学的に見て病気ではない」ということを本記事では伝えましたが、健康に悪影響を与えている場合は、病院に行くことは必要不可欠なことです。
3:フリースクール等の活用
家族の前では自分を表現できても、学校などの外に出た環境では、自己肯定感が高まらない可能性はあります。
そうした場合、「自分のペースを尊重してくれる」フリースクールや通信制高校の存在は、HSCのお子様にとって頼もしい存在となるでしょう。
フリースクールや通信制高校は、自分の意見が主張しやすい環境であり、学校側がHSCのお子様を受け入れる体制ができあがっている学校が多いため、自己肯定感を高めてくれるかと思います。
他にも習い事などの課外活動や芸術活動で、自己表現する才能が発揮できるものであれば、HSCの特性(思考力の深さ・感情・共感力など)が活きる可能性があり、自己肯定感を高めることに役立つはずです。
HSCと不登校の関係性まとめ
HSCやHSPという言葉や分類が近年になって定義されたばかりであり、医学的な認知はされていないのが現状です。
今後もその境界線はあいまいなものとして続くことが予想されます。
HSCと不登校についても同様で、関連性は認められているものの、HSCが病気や障害ではなく、生まれつきの「気質」である以上、「HSCだからといって、学校で特別な配慮がされること」は、今現在ではあまり期待できないのが正直な所です。
ただ、フリースクールや通信制高校は「HSCに理解を示している学び場所」であるため、HSCにより集団生活が厳しい場合は、新たな学び場所としての選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
また、「HSCやHSPについて、この記事を読んで初めて知った」「HSCを耳にしたことはあったが、詳細については知らなかった」という人には役立つ記事となったはずです。
もし、「わが子がHSCかも?」と思われているような場合は、今後の子育ての方針として本記事を参考にしていただければ幸いです。
「長期の不登校をなくしていくために。」
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